第7回 アレルギー性鼻炎と気管支喘息

鼻病変と気管支喘息

 気管支喘息患者では約80%にアレルギー性鼻炎が合併します。 アレルギー性鼻炎を合併した気管支喘息患者ではくしゃみ、鼻水が増悪する時期に一致して喘息症状が悪化します。 気管支喘息患者でアレルギー性素因を調べると、イエダニの陽性率は50%で以前と変わりがありませんが、 イネ科植物(カモガヤなど)では30%、スギでは50%(本州のデータ)と増加傾向です。このような花粉アレルギーが、 近年の気管支喘息患者数の増加に影響していると推測されます。
 一方副鼻腔炎を合併した気管支喘息患者では、 喘息症状が重症で喘息治療薬(吸入ステロイド)もたくさん必要など、治療が難しいことがよくあります。

鼻病変により気管支喘息が増悪する理由

 鼻病変があると喘息症状が悪化する理由として、
  1)気管支の炎症細胞が増加する
  2)鼻から神経系を介しての気管支への影響(Naso-pharyngeal Bronchial Reflexes)
  3)鼻閉のため口で呼吸をする
  4)鼻汁を気管支内に吸い込む
 など が考えられています。

アレルギー性疾患の発症の経過

 アレルギー性疾患を発症時期別にみると小児期には、食物アレルギーや アトピー性皮膚炎が起こります。小学校高学年から中学校時代に気管支喘息が増加し、思春期にアレルギー性鼻炎が急増します。 この発症の順番は「アレルギーマーチ」とよばれています。
 アレルギー性鼻炎の小児では、 気管支喘息を伴わなくても、喘息症状のでやすい傾向(気道過敏性の亢進)が認められます。その程度は気管支喘息患者と健常児の中間位で、 鼻の慢性炎症が気管支に影響を及ぼしていると考えられます。一方成人ではアレルギー性鼻炎から気管支喘息へ移行するケースも多くみられ、 鼻の炎症から気管支喘息を発症する可能性を示しています。

治療

 アレルギー性鼻炎を合併した 気管支喘息患者で、鼻炎の治療をすると呼吸機能も改善し、鼻炎症状の改善に加え、気管支喘息のコントロールにも効果が認められます。 逆に治療を中止すると鼻炎症状のみならず、呼吸機能の悪化や気道炎症の増悪が認められます。
 以上のようにアレルギー性鼻炎患者では、新たに気管支喘息を発症してくることがあり注意が必要です。また合併した喘息の症状が急に増悪することがあります。症状が続くようならただの鼻カゼと思わずに、 正しい診断と治療を受けるようにしましょう。

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