高血圧の患者数は増え続けており、約4,000万人いると推定されています。このうち継続的に治療を受けている患者数は約1,010万人です。 このうち血圧を正常にコントロールできている患者さんは30-40%にとどまっています。したがって、無治療の高血圧患者さんの治療を開始すること、治療中の患者さんの血圧コントロールを改善することが求められます。
第43回 高血圧の診断
高血圧はサイレントキラー
高血圧は症状がないにもかかわらず、放っておくと寿命を縮めることにつながることから、サイレントキラーと呼ばれています。血圧が高いまま放置しておくと、 腎不全と様々な合併症(臓器障害)を起こしてきます。高血圧自体は死亡の原因にはなりませんが、血圧が高いことによって起こるさまざまな合併症が寿命を縮めてしまいます。
仮面高血圧
診察室での血圧は正常なのに、それ以外の血圧(家庭血圧など)が高い場合を仮面高血圧といいます。早朝には交感神経やレニンアンジオテンシン系の活性化によって、血圧が高い場合がよくあります。 また、診察室での血圧測定は、朝のんだ降圧薬が効いている時間帯のため、血圧が正常にコントロールされているように見えても、降圧薬の効果が弱まる早朝は高血圧を示していることもあります。その結果、朝は心筋梗塞や脳卒中が最も起こりやすい時間帯でもあります。
家庭血圧
家庭用血圧計の普及によって、患者さんが、家庭で測定する機会が増えてきました。クリニックで月に1-2度測定する診察室血圧よりも、毎日測定する家庭血圧の方が、多くの情報を得ることができます。
大切なことは、毎日続けて測ることです。これによって自分の血圧の状態が分かるようになり、健康管理に対し前向きになります。家庭血圧を記録してクリニックで見せると、より適切な治療が受けられるようになります。治療目標は診察室血圧140/90mmHg以下よりも5mmHg低い135/85mmHg未満です。
24時間血圧
血圧を1日中連続して測定できる、携帯型自動血圧計(ABPM)を用いて測定する血圧です。ABPMは24時間装着したままで、日中は30分毎、夜間は1時間毎に血圧を測定します。一日の血圧変動が分かるのが特徴です。 そのため、仮面高血圧の診断、夜間睡眠中の血圧や、降圧薬が効いている時間帯、効いていない時間帯を知るのに役立ちます。血圧変動パターンを知ることによって、降圧剤の選択、内服時間など、患者さん一人ひとりに合った、より細かな治療方針をたてることができます。
以上のようにして、高血圧を診断します。その結果で、食事療法、運動療法、薬物療法など必要な治療法を選択します。詳細については、クリニックでお尋ねください。