第38回 『喘息の吸入抗原』

 喘息を増悪させる吸入抗原には、ハウスダスト、ダニなどほこりの成分、シラカバ、ヨモギなどの花粉、ペットのふけ、カビ、職業に関係したものなどがあります。成人では約2/3の患者さんでアレルギー性素因が認められますが、小児ではほとんどの例でアレルギー性素因がみられます。

症状

 ダニなどのアレルギーを持つ喘息患者さんがアレルゲンを吸入すると、吸入直後に気道が収縮し発作を起こします。さらに吸入数時間後から気道にアレルギー性炎症が起こり、遅発性の喘息症状の悪化をきたします。
 喘息発作がどのような時に起こるのかが大切です。吸入した直後でなくてもその日の夜から発作が始まることがあります。また喘息症状以外にも鼻水や目のかゆみを伴っていることがあります。のどの違和感が強い場合にはかぜと思っている患者さんがいます。
 室内で飼うペットアレルギーでは、飼育を始めると症状が出現し、ペットの手入れをすると症状が増悪します。花粉ではシラカバは春、カモガヤは夏、ヨモギは秋にアレルギー症状を増悪させます。一方ダニアレルギーでは1年中症状が続きますが、就寝時に増悪することがよくあります。

検査、診断

 アレルギー体質の人では血液中の好酸球やIgE抗体の増加が認められます。また特定のアレルゲンに対して結合する特異的IgE抗体を持っています。血液検査で特異的IgE抗体の種類と量を調べます。アレルゲンに対して反応するかどうか皮膚テストをすることもあります。さらに吸入誘発試験をして喘息発作が誘発されれば、アレルゲンであると確定されます。この検査は入院して施行しますが重症発作の危険性もあり、呼吸器科では症状や特異的IgE抗体から原因アレルゲンを判断しています。

アレルゲンへの対策

 ダニは喘息患者の吸入アレルゲンのうちでハウスダストとともに最もよくみられるものです。ダニは暖かく湿ったところでよく繁殖します。都市部で喘息の発症頻度が高いのは密閉した室内で、ダニが繁殖することが理由の1つと考えられます。窓を開けて部屋の風通しをよくしましょう。
 ダニを吸入するのが一番多いのは夜寝具に入る時です。寝具は干して掃除機をかけておきます。まくらカバー、シーツも洗濯してダニを除きます。絨毯、カーペットはダニが増えやすいところなのでよく掃除機をかけ、できれば使わないようにします。その他布製のソファ、クッション、ぬいぐるみにも掃除機をかけたり、カバーを洗ったりしましょう。
 花粉アレルギーの患者さんは花粉の季節に目や鼻の症状とともに、喘息症状が増悪します。花粉飛散開始前に抗アレルギー薬の内服治療を開始して症状の悪化を予防します。ネコ、イヌなどのペットを室内で飼うことは喘息発作の原因となります。

 喘息患者さんはまず呼吸器科を受診し、検査を受けて、どの抗原に対してアレルギーがあるのかを知りましょう。そしてできるだけアレルゲンを取り除いたり、避けるようにすることが喘息予防、治療の第一歩です。

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