寒い季節、内科では、風邪やインフルエンザの患者さんが多いですが、お腹の症状を訴える方も少なくありません。ウイルスや細菌による下痢もよくみられます。
第32回 下痢の予防、治療
下痢とは
理想的な排便は、1日1回便意をもよおして、トイレへ行くとスムーズに便が出る。固さもほどほでで、排便時に爽快感がある。排便後も残便感がなく、すっきりしている状態です。
下痢は便の水分量が多いまま出てしまう便通異常です。下痢は病原体や有毒物質が体内に入った時に排除する、生体防御反応の一つと考えられます。
1.急性下痢
1)感染性下痢
ウイルスや細菌感染が起こり、腸管からの水分分泌亢進によって起こります。発熱、腹痛、悪心、嘔吐を伴います。風邪による下痢もこのひとつです。
2)非感染性下痢
発熱を伴わない急性の下痢です。暴飲暴食や寝冷え、冷たい牛乳で起こるもの、アレルギー性の下痢があります。抗生物質や虚血性大腸炎による下痢もこのタイプです。
2.慢性下痢
1ヶ月以上続くものです。最も多くみられる過敏性腸症候群は、ストレスなどから自律神経のバランスが崩れて起こります。腸管の運動が亢進し下痢が起こります。慢性炎症性腸疾患では腸粘膜からの水分吸収が低下し、下痢が起こります。
下痢の治療
下痢が続いたり、嘔吐を伴う場合には脱水や電解質異常が多くみられます。特に高齢者や小児で起こりやすいため注意が必要です。輸液により水、電解質の補給をします。経口摂取できる場合は体液の組成に近いスポーツドリンクを使用します。食事はお粥にして、脂肪分の多いものや乳製品は避けます。1回の摂取量を少なくして、食事の回数を増やします。柔らかく煮た野菜スープは水分も十分にとれます。すりおろしりんごは便を適度なやわらかさに固める働きがあり、おすすめです。
みかんなどの柑橘類は酸味が腸を刺激するので避けた方が良いでしょう。冷たい飲み物や香辛料、アルコールは禁止です。食事によって、腹痛や下痢が増悪する場合は、絶食として輸液を行います。
慢性下痢では長期間の治療になるため、体力低下を防ぐことが大切です。腸への刺激が少なく、消化の良いもの、栄養価の高い食品をよくかんで食べるようにしましょう。卵や鶏肉、白身魚、大豆製品、バナナ、りんごなどのくだものがよいでしょう。ヨーグルトは整腸作用があるので有効です。
薬物治療では、腸管運動抑制薬や整腸剤などが使用されます。腹痛を伴う場合は抗コリン薬を使用します。感染性下痢の場合は、下痢止めを使いすぎないよう注意します。細菌性腸炎が疑われる場合は抗生剤を使用します。過敏性腸症候群では上記の他に抗不安薬、抗うつ薬を併用します。
下痢の予防法としては、日頃から体調を整える、暴飲暴食を避ける、新鮮なもの以外は火を通して食べる、気分転換になる趣味やスポーツでストレスを発散するなどが考えられます。自分の生活や食事に合わせて、工夫してみましょう。症状が続く場合は、内科でご相談ください。