胃食道逆流症は、胃酸が食道内に逆流することによって、胸やけなど様々な症状を起こします。内視鏡検査で食道の粘膜障害を認めるものは、逆流性食道炎と呼ばれます。胃食道逆流症の患者さんは、喘息様症状を訴えることがあります。また気管支喘息患者では、半数以上で胃食道逆流症を合併しているといわれています。
第22回 胃食道逆流症と喘息
胃食道逆流症は喘息症状を増悪させる
胃食道逆流症があると咳や喘鳴が出現し、気管支喘息を発症させたり増悪させたりと、両者は密接に関係しています。難治性の気管支喘息患者さんの一部では、胃食道逆流症が気管支喘息のコントロールを難しくしていることがあります。
胃食道逆流症が喘息症状を増悪させる理由として、1.誤嚥説と2.神経反射説の二つが考えられています。
1)逆流した胃内容物を気管内に吸い込んで、喘息症状を起こす。
2)胃酸による食道粘膜への刺激が、迷走神経を刺激して、気道過敏性を亢進させる。
胃食道逆流症が関係している気管支喘息
肺と食道は発生学的に共通性があり、影響を及ぼしあっていると考えられます。気管支喘息患者さんでは、食道の蠕動運動の異常を伴うことがあります。逆流症状がない気管支喘息患者さんでも、食道内pHモニタリング検査を行うと、胃食道逆流が認められることがあります。
以下のような気管支喘息の患者さんでは、胃食道逆流症の合併を疑って治療を行う必要があります。
1)喘息発作の前に胸やけなどの逆流症状が出現する。
2)食事で喘息発作が誘発される。
3)仰臥位で喘息症状が増悪する。
4)アトピー素因が明らかでない喘息。
気管支喘息患者に対する胃食道逆流症治療
胃食道逆流症を合併した気管支喘息患者さんでは、暴飲暴食をしない、肥満を改善させるなどの一般的治療に加えて、胃酸分泌抑制薬の内服治療を行います。これによって喘息症状が改善したり、喘息治療薬を減量できるなどの効果がみられます。
また喘息治療薬の気管支拡張剤によって、食道下部括約部の圧が低下し、逆流の誘因となることがあります。病状によって薬剤の変更や併用が必要です。
気管支喘息の患者さんでは、ステロイド依存性など重症で、治療が難しい場合があります。治療しても症状が改善しにくい方や、逆流症状を伴う方は、胃食道逆流症の合併も考慮した治療が必要ですので、呼吸器科で相談してみましょう。