第16回 肥満症

 肥満は食物の摂取エネルギーが、消費するエネルギーより多いため、脂肪が体内に過剰に蓄積された状態です。生活習慣による基礎代謝量の低下と運動不足も原因です。

肥満の診断

 肥満の診断は脂肪の量からなされます。現在汎用されている体脂肪計はインピーダンス法に基づき、体の電気抵抗を測定して脂肪量を推測します。全身に占める脂肪の割合を体脂肪率といいます。男性では体脂肪率25%以上、女性では30%以上が肥満です。
 肥満だけでは治療対象となりませんが、肥満で生活習慣病などの合併症を有するか、腹部内臓に脂肪が過剰蓄積しているものを、肥満症と診断し、これは治療が必要です。

ボディマスインデックス

 日常の診療では簡便に身長、体重から肥満を判定しています。標準体重の指標として、ボディマスインデックス、BMI (Body Mass Index) が使用されます。BMIは体重(kg)/身長(m)/身長(m)で算出します。BMIが高い程、高血圧、糖尿病、高脂血症の頻度が高くなり、逆にBMIが低い程、貧血、呼吸器疾患、消化器疾患の頻度が高くなります。疾病の有病率が最も低いのはBMIが22で、この体重が理想体重です。従って標準体重(kg)=身長(m)X身長(m)X22、身長160cmでは標準体重は56kgです。BMIが25を超えると肥満で、身長160cmでは64kgを超える場合です。

肥満の合併症

 日本人は欧米人よりも、摂取した栄養を脂肪として体内に蓄える、倹約遺伝子を持つ頻度が高く、また近年欧米型の高脂肪、高カロリーの食習慣、乗用車、交通機関の発達による運動不足から肥満になりやすく、合併症を併発しやすいといわれます。
 肥満は多くの生活習慣病の危険因子です。疫学調査では標準体重の人と比較して、糖尿病、高血圧は3~4倍発症しやすく、虚血性心疾患は3倍、高脂血症は7倍、脂肪肝は12倍発症しやすいといわれています。

肥満症の治療

 減量は必ずしも標準体重を目標とする必要はありません。肥満の状態から10%減量できれば、肥満に伴う合併症が改善するからです。治療には食事療法、運動療法が行われます。また抗肥満薬を併用することもあります。
 抗肥満薬で保険適応のものはマジンドールと防風通聖散の2薬剤です。マジンドールは視床下部の摂食中枢と満腹中枢に作用して食欲を抑制します。BMIが35以上の超肥満者(身長160cmで体重90kg以上)に適応です。防風通聖散は中性脂肪を分解し、中性脂肪を蓄積している白色脂肪細胞を減少させます。また脂肪を燃やし熱として放散させる褐色脂肪細胞を活性化し、基礎代謝量を増加させます。これらを食事療法、運動療法と併用して、効果的な減量をすることができます。

 肥満は様々な病気と密接に関連しています。今後ダイエット法や病気の治療に関連して、とりあげていく予定です。詳しくは、内科でお尋ねください。

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