高血圧の一般的治療

高血圧は病初期にはあまり自覚症状はありませんが、脳卒中や心臓病など命に関わる合併症を起こすため、サイレントキラーとよばれています。これらの重大な合併症を予防するために、最近の治療では従来よりも、血圧をより低くコントロールすることが勧められています。

降圧目標値

 2004年の日本高血圧学会の高血圧治療ガイドラインでは、若年者、中年者では、130/85 mmHg未満と従来どおりですが、高齢者では、140/90 mmHg未満、糖尿病では、130/80 mmHg満未と従来よりも厳格な降圧目標値が示されています。

減塩だけで血圧が下がる

 現在わが国では1日11gから12gの食塩を摂取しています。ほとんどの加工食品に食塩が添加され、また調味料としても、主に食塩を多く含んだものが使用されています。
 食塩摂取量と高血圧との関係の研究では、1日9gから1日3gまで制限するに従って直線的に有意に血圧が下がりました。これらの結果から、1日摂取量6g以下の減塩を勧めています。
 この6gとは、例えばカップめん1個に含まれる食塩量です。加工食品や外食で1日3食をとると、減塩は困難です。塩分を控えた料理を作るか、できあいの塩辛い料理は全部食べないで、残すようにしましょう。

適正体重の維持(減量)

 肥満はボディマスインデックス(体重Kg÷身長÷身長m)で25以上と定義されます。肥満は高血圧の重要な危険因子であるとされています。
 減量の降圧効果は確立されており、4-5Kgの減量で降圧が期待できます。また減量により薬の量を減らすことができ、合併する高脂血症や糖尿病も改善されます。

運動療法

 高血圧の運動療法では有酸素運動の早歩き、ランニング、水中歩行など軽い運動が勧められます。
 運動量としては、1日30分以上、できるだけ毎日定期的に行うのが良いとされています。このような運動を10週間続けると、平均で収縮期10 mmHg、拡張期6mmHgの降圧を認めました。
 また運動量の多さと降圧の程度はあまり関係がなく、継続して行うことが重要です。
 ただし重症の高血圧や、心不全、虚血性心疾患、脳卒中、糖尿病などを合併している患者さんでは、主治医に相談して始めるようにしましょう。また高齢者でも軽度の有酸素運動は有効で、制限すべきではありませんが、運動療法開始前に合併症の有無を確認する必要があります。

高血圧は糖尿病や高脂血症など他の生活習慣病を合併しやすく、また最近ではメタボリックシンドロームの診断でも重要性を増しています。新しい降圧薬では血圧を低下させるだけでなく、糖尿病発症を予防したり、メタボリックシンドロームの進展を抑制する効果のあるものもあります。自分の病状に合った治療を受けるようにしましょう。