第44回 体に良い脂質

近年我が国では、高齢者人口の増加にともなって、動脈硬化性疾患が増加しています。また食生活の欧米化、交通機関の発達による日常生活での運動不足のため、肥満・メタボリックシンドロームも増加しています。その結果心筋梗塞などの虚血性心疾患、脳梗塞、脳出血などの脳血管障害による死亡は、全死因の30%を占めるようになりました。

1.動脈硬化の原因

糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満、メタボリックシンドローム、喫煙などが動脈硬化の原因です。このうち脂質異常症では有効な治療薬が開発され、コレステロール、中性脂肪の検査値を正常化させる事は他の疾患よりも比較的容易になりました。実際の治療で大切なことは、それ以外の危険因子も同時に改善させることです。そのために薬物治療と同時に食事療法、運動療法が必要になります。

2.脂肪酸の種類

食事からとる脂肪には、積極的に摂取が推奨されるものと、摂取を控えた方がよいものがあります。

推奨されるもの
脂質 食品
一価不飽和脂肪酸 オレイン酸 オリーブ油
n-3系多価不飽和脂肪酸 α-リノレン酸 アマニ油、エゴマ油、しそ油
EPA
DHA
控えた方がよいもの
脂質 食品
多価不飽和脂肪酸 パルミチン酸、ステアリン酸 バター、牛肉、豚肉
n-6系多価不飽和脂肪酸 リノール酸 マーガリン、マヨネーズ、サラダ油
アラキドン酸 レバー

α-リノレン酸は代謝されて、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA (ドコサヘキサエン酸)になります。EPA 、DHAは中性脂肪を低下させ、血栓予防効果があります。

リノール酸は代謝され、アラキドン酸になります。アラキドン酸は必須脂肪酸ですが、炎症性疾患、アレルギー反応を増悪させ、血栓形成を促進しますので、過剰にならないよう注意しましょう。

3.動脈硬化を起こしやすい脂質

液体の油を固める過程で、トランス脂肪酸が生成されます。マーガリンやショートニングに含まれます。冠動脈性心疾患のリスクを高め、アレルギー反応を増悪させます。摂取を控えましょう。

脂肪は酸化されると、過酸化脂質となり、細胞膜の機能を損ない、動脈硬化の原因となります。古い油や長時間加熱した油は使わない様にしましょう。

以上の他、血液検査で、IDL(アイディーエル)、sdLDL(スモールデンスエルディーエル)、RLP-C(アールエルピーコレステロール)などを評価し、治療します。今回紹介したのは、よく知られた動脈硬化の原因です。患者さん一人一人の病態を、脂質以外も含めて異常がないかどうか調べ、評価する事が大切です。最適な治療法を選択し、動脈硬化の進展を予防しましょう。

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