近年日本では生活習慣の変化に伴って、糖尿病患者さんが増えています。新しい糖尿病治療薬も次々に開発、使用されるようになり、糖尿病治療の選択肢が増えました。
糖尿病の内服薬には、以下のような種類があります。
第41回 最新の経口糖尿病治療薬
1.インスリン抵抗性改善系:インスリンの効果を高める薬
1)ビグアナイド薬
肝臓で糖をつくるのを抑制します。
2)チアゾリジン薬
筋肉、肝臓でインスリンの効果を促進します。
2.インスリン分泌促進系:インスリンを多く分泌させる薬
1)スルホニルウレア薬
常時インスリン分泌を促進します。
2)グリニド薬
食後速やかにインスリン分泌を促進し、食後の血糖を下げます。
3)DPP-4阻害薬
血糖に応じて、インスリン分泌を促進し、グルカゴン分泌を抑制します。
3.糖吸収・排泄調節系:糖の腸管からの吸収、腎臓からの排泄を調節する薬
1)α-グルコシダ-ゼ阻害薬
炭水化物の吸収を遅らせて、食後高血糖を改善します。
2)SGLT2阻害薬
腎臓で糖の再吸収を阻害し、尿中に排泄します。
このうち一番新しい薬がSGLT2阻害薬です。この薬は腎臓に作用して血糖を下げる、初めての薬です。
2型糖尿病では、血糖値が高いにもかかわらず、腎臓での糖の再吸収が亢進しています。それをSGLT2阻害薬は健康人以下に低下させ、糖を尿中に排泄し、血糖を下げます。
1.SGLT2阻害薬の効果
1)インスリン分泌を刺激しないので、インスリン分泌促進系の薬と相乗効果が期待できる。
2)腎機能が低下した糖尿病患者さんでは、糖のろ過量、再吸収能が低下しているので、効果は減弱する。
2.SGLT2阻害薬の利点
1)血糖が高いほど、血糖を下げる力が強く、単剤での低血糖のリスクが少ない。
2)長期間持続的な血糖コントロールが得られる。
3)今までにない作用機序のお薬で、他のすべての血糖降下薬と併用可能。
3.血糖を下げる以外の作用
1)糖を尿中に排泄し、脂肪量を減少させ、体重を減らす。
2)内臓脂肪量も減少させ、インスリン抵抗性やメタボリックシンドロームを改善する。
3)糖と同時に塩分も尿中に排泄させ、血圧を下げる。
4)中性脂肪の分解を促進し、中性脂肪値を下げる、善玉コレステロール値を高める。
5)尿酸の尿中への排泄を促進し、尿酸値を下げる。
6)SGLT2阻害薬は腎臓で血糖を下げるため、インスリン分泌量を減らし、膵臓を保護する。その結果、インスリン分泌能の改善が期待できる。
このように、優れたお薬ですが、現在まで尿路感染症、性器感染症、頻尿、多尿、脱水、ケトアシドーシス、皮疹など、多くの有害事象も報告されています。特に高齢者では脱水、低血糖などの副作用が起こりやすく、よい適応ではありません。また腎機能の低下した患者さんや、経口摂取が十分でない患者さんでは、注意が必要です。
糖尿病学会では、SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendationを出して、適正使用をよびかけています。中年までの肥満やメタボリックシンドロームの糖尿病患者さんに、良い効果が期待できるお薬です。詳細については、クリニックでお尋ねください。