第36回 『軽症糖尿病の治療』

 糖尿病患者の数は増え続けており、糖尿病が強く疑われる人も含めると約950万人いると推定されています(厚生労働省の国民健康・栄養調査)。また糖尿病の年間医療費は1兆2,000億円で、国民医療費40兆円の3%に相当しますが、血液透析など糖尿病合併症の医療費も加えると、さらに多額になります。

糖尿病の症状

 糖尿病発症初期には自覚症状はありません。高血糖が進行するにつれて、のどが渇く、尿量が多いなどの症状が出現します。病初期には健康診断で発見され、治療が開始されます。

糖尿病の合併症

 高血糖の状態を放置すると全身に様々な合併症を引き起こします。そして糖尿病患者の寿命は健康人よりも10年短いといわれています。

  1)網膜症。視力が低下します。失明に至ることもあります。
  2)腎症。腎機能が低下します。血液透析が必要になることがあります。
  3)神経障害、手足のしびれなどの症状が出現します。

 以上が3大合併症とよばれます。 これらは糖尿病発病5~10年後に現れると考えられています。また糖尿病による動脈硬化が原因で脳梗塞、脳出血、狭心症、心筋梗塞が起こります。これらは3大合併症よりも早期に、糖尿病発病初期からすでに、発症のリスクが高まっています。

増悪因子

 食べ過ぎ、アルコール、ペットボトル飲料の飲み過ぎ、運動不足は体重増加を招き、糖尿病を悪化させます。かぜなど感染症の合併やステロイドなどの薬剤でも糖尿病が増悪します。

軽症糖尿病の治療

 健康人では食後にインスリン分泌が増えて、血糖値の上昇をコントロールしますが、軽症糖尿病ではインスリンの効果が低下するため、食後の血糖値が高くなります。治療はまず食事療法、運動療法を行い、インスリン作用の不足による代謝異常をコントロールします。
 これで効果が不十分な場合には、薬物治療として、 ブドウ糖を尿中に排泄するSGLT2阻害薬、小腸での糖質の吸収を遅延させ、食後高血糖を軽減させるα-グルコシダーゼ阻害薬、インスリンの効果を強くするビグアナイド薬やチアゾリジン薬などが使用されます。
 薬は内科医の指示に従って正しくのみましょう。のみ忘れたり、自分の判断で量を増減してはいけません。アルコールはできるだけ控えましょう。また発熱時や胃腸の調子が悪い時など病気の日には、薬をのむかどうか内科医に相談してください。また他の病気のため薬をのむ場合には、血糖降下剤の効果が強くなりすぎ低血糖になったり、逆に効果が弱くなったりします。別の病院を受診する時にはお薬手帳を示して、糖尿病の治療を受けていることを伝えましょう。これらの治療を行い、動脈硬化性疾患や3大合併症の発症を予防します。

 糖尿病は本人が気づかないうちに発症し増悪します。健康診断などで早期に発見し、内科で治療を開始して、合併症を予防、健康人と同様の生活を送れるようにしましょう。

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