肥満症については、第16回でとりあげましたが、近年日本人で肥満症は増加しています。肥満症の重要な合併症のひとつに糖尿病があります。糖尿病や糖尿病予備軍の患者さんも急増しています。その理由は肥満者が増加しているほかに、日本人は欧米人よりも膵臓の予備能が少なく、インスリン作用不足になりやすいためです。
第28回 肥満と糖尿病
糖尿病とインスリン抵抗性
インスリンが血液中に存在するにもかかわらず、インスリン作用が発揮できない状態をインスリン抵抗性といいます。インスリンはブドウ糖を、脂肪組織や筋肉に取り込んだり、肝臓でブドウ糖の産生を抑制します。このインスリン作用が十分に発現されないと糖尿病になります。
インスリン抵抗性があると、インスリンの効果を発現させるために、血液中のインスリンの濃度が高くなります。一般的に肥満者や運動不足の人では糖尿病でなくてもインスリン抵抗性、高インスリン血症がみられます。この高インスリン血症によって、高血圧や動脈硬化などの合併症が発症します。
減量時の注意点
糖尿病患者さんで肥満がある場合、食事療法、運動療法を行い、減量を目指すのが治療の第一歩です。食事療法はエネルギーバランスを負にする必要があります。減量療法の1日摂取カロリーは、標準体重(Kg)=身長(m)X身長(m)X22に、労働量などに応じて20から25をかけた量です。例えば身長160cmでは1.62X1.62X22X(20~25)で、1日1,100から1,400 kcalです。
無理のない減量は1ヶ月で2Kg体重が減る程度です。1Kgの体脂肪は7,000 kcalに相当しますので、一日で7,000X2/30=460 kcal 分エネルギーバランスを負にする必要があります。食事で200 kcal減量し、運動療法として1日1時間歩行程度の運動をして、200~300 kcal消費すると良いでしょう。
食事は一日の量を4~5回に分けて食べると、血糖値の変動を抑えることが出来ます。またゆっくり食べると満腹感が得やすく食後高血糖を防ぐことができます。
一方糖尿病でも、やせている患者さんは、標準体重になるよう摂取カロリーを増やす必要はありません。血糖のコントロールが不十分であれば、インスリン分泌が不十分なことが多く、インスリン治療が必要になることもあります。
あまり減量を意識していないのに。体重が減少してきた場合には、糖尿病が改善しているのではなく、逆にコントロールが悪く、摂取した栄養分が利用されていないためです。また糖尿病以外の病気を合併してやせる場合もありますので、内科でよく相談しましょう。