従来インフルエンザの診断は臨床症状からなされていました。治療も消炎鎮痛剤や抗生物質の投与と、症状の緩和や合併症の予防が中心でした。しかし近年迅速診断キットの使用により正確に診断できるようになり、有効な抗ウイルス薬も使用されるようになったため、インフルエンザの診療は大きく変化しました。
第27回 インフルエンザの診療
症状
典型的には突然、高熱で発症し、全身倦怠感が強く、関節痛、筋肉痛を伴います。のどの痛み、頭痛、咳、鼻水がみられることもあります。ただし、B型インフルエンザでは、典型的な症状を示さず、症状だけでは、感冒と区別がつきにくいこともあります。
高齢者とインフルエンザ
インフルエンザの死亡例の70-80%は高齢者といわれています。ほとんどの高齢者は様々な基礎疾患を合併しており、特に呼吸器疾患、心不全患者では肺炎を併発して重篤になることがあり、注意が必要です。
また高齢者では、典型的な症状が軽度なことがあり、インフルエンザを疑うことが大切です。
小児とインフルエンザ
冬期間は学校や幼稚園でインフルエンザが流行します。小児のインフルエンザは40度の高熱や痙攣など、大人よりも症状が強いのが特徴です。
特にインフルエンザ脳症は死亡の原因となることがあり、早期に受診することが必要です。痙攣や意識障害、嘔吐などの症状がある場合は、すぐに小児科医の診察を受けましょう。
治療
インフルエンザの治療薬、抗ウイルス薬には内服薬、吸入薬、点滴注射薬ががあります。内服薬は5日間内服します。吸入薬には5日間吸入するものと、1回だけ吸入するものがあります。点滴注射薬は1回の治療です。
これらの抗ウイルス薬は通常、発症後2日以内に用いられます。発症から日数が経ってしまうと、治療をしても、インフルエンザの自然経過と同様で、治療効果は弱くなります。
インフルエンザとSARS(重症急性呼吸器症候群)
SARSの原因ウイルスであるコロナウイルスもインフルエンザと同様に低温、低湿度の環境下で流行しやすいウイルスです。もしもSARSがインフルエンザの流行時期に再流行すれば、発症初期の症状は両者とも発熱、全身倦怠感などで、症状のみから両者を鑑別することは困難です。
鑑別点としてSARSでは、発症前に流行地域への渡航歴がある事、胸部X線で異常陰影がある事です。SARSの迅速診断キットも開発中ですが、まだ一般には実用化されていません。海外渡航歴があり、高熱などで発症した場合は、まず保健所に連絡して専門の医療機関を受診することが大切です。
インフルエンザウイルスは新型のウイルスが出現し、流行を繰り返しています。流行時に発熱などの症状が出現した場合には、早めに内科を受診して、治療を受けるようにしましょう。