第18回 メタボリックシンドローム

 肥満には内臓脂肪型肥満と皮下脂肪型肥満の2つのタイプがあります。肥満に生活習慣病が合併しやすいことはよく知られています。しかしその頻度は肥満の程度よりも、むしろ脂肪がどこにたまるかに関係しています。腹部、特に腸間膜周囲に脂肪がたまる内臓脂肪型肥満が、生活習慣病に密接に関連しています。

内臓脂肪型肥満

 お腹を中心とした上半身に脂肪がつくタイプで、リンゴ型といわれる中年太りの体型です。中心型肥満、上半身肥満とも呼ばれます。
 内臓脂肪型肥満かどうかは腹部CTスキャン検査で、内臓脂肪面積と皮下脂肪面積を算出して診断されます。簡便な方法としてウェストーヒップ比があります。ウェスト÷ヒップが男性で0.95以上、女性で0.85以上を内臓脂肪型肥満の目安としています。より簡単にはウェスト周囲径が男性で85cm以上、女性で90cm以上であれば内臓脂肪型肥満である可能性が高いと考えられます。

脂肪が全身に及ぼす影響

 脂肪細胞は従来、単なる脂肪貯蔵庫と考えられていましたが、他の機能として、糖尿病、高血圧、血栓症、動脈硬化などに関係する様々な物質、アディポサイトカインを分泌しています。例えば、TNF-αはインスリン抵抗性を起こし、糖尿病を発症させます。アンジオテンシノーゲンはアンジオテンシンIIを介して、高血圧を起こします。PAI-1は線溶系を抑制し血栓症を起こします。一方アディポネクチンは動脈硬化を改善させる働きがありますが、脂肪組織が増加するにつれて分泌が減少し、動脈硬化が進行します。
 内臓脂肪は皮下脂肪よりも代謝活性が高く、速やかに分解されるため、遊離脂肪酸を増加させ、脂質異常症を増悪させます。分解された遊離脂肪酸は、門脈を通って直接肝臓に流入し、肝臓での中性脂肪合成が亢進し、脂肪肝を起こします。

メタボリックシンドローム

 ウェスト周囲径が男性で85cm以上、女性で90cm以上であり、加えて高脂血症、高血圧、高血糖のうち、いずれか2項目以上を満たす場合、メタボリックシンドロームと診断されます。メタボリックシンドロームの患者さんでは、全身の動脈硬化が進行し、脳梗塞や心筋梗塞の頻度が高まります。この病態の形成には食事や運動など、生活習慣の関与が強いと考えられます。

 肥満者の脂肪組織量は膨大であり、サイトカインを介して全身に及ぼす影響は重大です。メタボリックシンドロームにあてはまる方は食事療法、運動療法などの生活習慣改善を含む、内科的治療を受けるようにしましょう。

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