第7回 気管支喘息とは

1.気管支喘息とはどのような病気でしょう?

 喘息は気管支が狭くなって、呼吸が苦しくなり、ゼーゼー、ヒューヒューする病気です。その他、咳や痰などの症状もみられます。
 古典的には気流制限(気道が狭くなり呼吸しにくくなる)が、可逆性(よくなったり、わるくなったり)に起こる、気道平滑筋のスパズム(けいれん性に収縮する)と考えられていました。
 1980-1990年代になると、気管支喘息とは気道の慢性炎症性疾患であり、それによって気道のリモデリング(2参照)が起こると考えられるようになりました。また気管支線毛上皮細胞(痰を外に出す)が消失するため、痰が出にくくなります。その結果気道がさらに狭くなり、気道内にアレルゲンが残存しやすくなるため炎症を増悪させます。
 このような状態では気道の過敏性(3参照)が亢進し、わずかな刺激でも気管支が収縮しやすくなります。健常人では反応しないような刺激によって発作が誘発されます。最終的には慢性的な呼吸機能低下が起こると考えられています。

2.気道のリモデリングとは

 気道の炎症が慢性的に続く結果、正常な気道の組織が破壊されたり、変性がおこります。その結果、気道上皮下の基底膜が肥厚する、気道の平滑筋が肥大、増殖するなど、気道の形態が変化します。また杯細胞の過形成が起こるため、喀痰の量が増えます。これを気道のリモデリングといいます。
 一度気道のリモデリングが起こってしまうと、治療しても、完全にもとどおりには戻りません。そのためリモデリングを起こした患者さんでは、重症度が高く、治療に難渋することがあります。気道のリモデリングを防ぐために、吸入ステロイドによる抗炎症治療を続けることが大切です。

3.気道の過敏性とは

 冷たい空気をすったり、タバコの煙のある場所で咳込む、呼吸が苦しくなったりすることがあります。これを気道過敏性があるといいます。
 その機序として、気道の炎症の結果、粘膜バリアの損傷により、神経末端が露出して、咳反射が起こりやすくなる、また気管支平滑筋が収縮しやすくなる、などが考えられます。
 また気道のリモデリングが起こって、気道壁が厚くなると、同程度の気道収縮でも、気道抵抗はさらに高くなり、症状が強くなります。したがって、リモデリングを起こした気道では、気道過敏性が亢進することになります。

4.どの位の患者さんがいるでしょう?

 わが国では成人の6-10%、小児では11~14%が喘息にかかっているといわれています。1960年代には成人、小児とも1%程度でした。その後ほぼ10年ごとに1.5倍程度増加していると報告されています。

5.喘息による死亡者数はどのぐらいでしょう?

 わが国の喘息死亡者は、1年間に1,450人で、人口10万人あたり1.2人です。喘息死亡率の動向や世界的な比較に適した、5-34歳の年齢階級死亡率は人口10万人あたり0.1人と、世界的にも最も低い群に属します。
 これはわが国で喘息予防管理ガイドラインが普及し、医療関係者、患者の治療レベルが向上し、吸入ステロイドの使用が増加したためと考えられています。
 一方65歳以上の高齢者の占める割合は、89%と高く、さらに増加傾向にあります。高齢者喘息死が喘息治療の大きな問題となっています。

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