気道炎症を抑える効果が最も強力な薬剤です。その機序は炎症細胞浸潤を抑制する、サイトカイン(喘息の炎症の原因となる物質)産生を抑制する、気道壁のリモデリングを予防するなどです。この薬剤の使用により喘息患者入院数や喘息死の減少が認められています(この薬剤だけ)。また呼吸機能の改善や気道過敏性(症状がでやすい)の改善も認められますが、特に気道過敏性の改善は喘息発症後数年以内に治療を開始した場合に認められます。喘息発症初期から使用して優れた治療効果が得られています(early intervention)。使用量は初め高用量で開始して、低用量で維持するのが基本です。
低用量で維持するのが基本です。小児においては以前、副作用の心配からあまり使用されませんでした。しかし最近は成人同様に良好な効果が認められ、副作用もほとんど無いことが分かってきたため、第一選択薬として使用されるようになりました。
吸入ステロイド薬
1.アルデシン、ベコタイド、キュバール(一般名ベクロメサゾン)
アルデシン、ベコタイドは30年前に発売された薬で、これまでの使用経験に基づいた豊富な臨床データがあります。発売当初は1日4回の吸入が必要といわれており、吸入のし忘れが問題でした。1吸入で一定の量の薬剤が吸入できますが、製剤にフロンを含むため、将来的には製造中止となる予定です。また吸入補助具(スペーサー)を使用する手間がありました。しかし呼吸機能が低下した患者でも十分に吸入ができるという利点もあります。
キュバールはフロンを使用していない新製品です。粒子径が小さいため(1μm)、スペーサーを使用する必要がありません。従来の製剤よりも末梢気道まで到達するため、より良好な治療効果が期待されます。しかし実際に治療効果を評価するには、これからデータの蓄積が必要です。
2.フルタイド(一般名フルチカゾン)
ベクロメサゾンよりも抗炎症作用が強く、1日1-2回の吸入でベクロメサゾンよりも良好な治療効果が得られます。しかし乳糖を添加した製剤で粒子径が大きいため、末梢気道への沈着率が低いといわれています。また呼吸機能が低下した患者では吸入が困難です。のどの刺激感、声がかすれるなど咽喉頭の副作用が強いのが欠点です。
3.パルミコート(一般名ブデソニド)
タービュヘイラーという優れた吸入容器(容器自体が特許をもつ)に入っており、吸入が容易です。粒子が小さく一回の吸入量 も少ないため、咽喉頭の副作用が少なく、呼吸機能が低下した患者でも吸入が可能です。また肺内沈着率が高く、気管支に長くとどまる(脂肪酸エステル化されるため)という長所があります。1日1-2回の吸入で十分な効果 が得られます。以上3剤のうち安全性が最も高いといわれています(特に妊婦において。アメリカ合衆国のFood & Drug Administrationによる)。