第9回 咳の続く病気、百日咳

成人発症の百日咳についてです。
百日咳は従来乳幼児の病気でしたが、1990年代に3種混合ワクチンが生後3カ月から接種できるようになり、小児の百日咳は減少しました。一方2006年以降は成人の患者数が増加しています。成人発症の百日咳では症状が典型的でない場合が多く、また治療、感染予防にも注意が必要です。

百日咳とは

百日咳菌によって引き起こされる呼吸器感染症で、その名の通り、咳が長引くのが特徴です。潜伏期間は約1週間。他の人へうつるのは、発症後数週間です。百日咳菌が産生する毒素によって、咳が続きます。

症状

 発症後1-2週間は、熱のないかぜ症状です(カタル期)。その後、咳が出現して、2-5週間続きます(痙咳期)。小児では、百日咳に特徴的な、連続性の咳や、息を吸う時にヒューという音がするなどの症状がみられます。しかし成人では、はっきりしないことが多いため、他の咳が続く病気との鑑別が問題となります。その後回復期となり、全経過は6-12週間です。

診断

学校、職場や家庭に百日咳の患者さんがいた場合は、まず百日咳を疑います。喀痰検査から百日咳菌が検出されれば、診断が確定しますが、菌の培養が難しいため、陽性率は低いです。血液中の百日咳菌毒素に対する抗体価で診断します。初診時に有意な上昇があれば、診断できます。中等度以下の上昇の場合は、3種混合ワクチンを接種したか、また2週間後の抗体価が4倍以上に上昇したかによって診断します。

治療

百日咳菌に対する抗生物質ではマクロライド系抗生物質が第一選択薬です。カタル期に投与開始すれば、咳症状に有効です。痙咳期には咳を改善させる効果は乏しいと考えられますが、除菌することによって、周囲への感染を防ぐために、投与が推奨されます。その他、咳に対する対症療法が行われます。

予防

 百日咳ワクチンを含む3種混合ワクチン接種が行われており、幼少児では有効です。
2006年以降、成人発症例が増加しています。百日咳ワクチンは、接種後10年位で、予防効果がなくなるためです。問題なのは、家族内感染です。親から、まだワクチン接種をしていない乳幼児に感染して、重症な百日咳を発症する危険性がありますので、注意が必要です。

以上のように、成人の百日咳は診断に難しい点がありますので、咳が続く場合には呼吸器科で診察を受けましょう。他の病気との鑑別、薬物療法が行われます。詳細については、クリニックでお尋ねください。

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