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第10回 『酒は百薬の長?』

 「酒は百薬の長」といわれます。しかし一方では「一杯は人、酒を飲み、二杯は酒、酒を飲み、三杯は酒、人を飲む」ということもあります。酒は飲み方によって、薬にも毒にもなるということです。

フレンチパラドクス
 フレンチパラドクスをご存知でしょうか?フランス人は動物性脂肪の多い、フランス料理を食べ、血中コレステロール値も他国民よりも高値です。コレステロール高値は虚血性心疾患の重要なリスクファクターです。それなのに虚血性心疾患は他国民よりも多くない。これはなぜでしょうか?
 フランス料理に赤ワインは欠かせません。赤ワインにはポリフェノールが、他の食品よりも多く含まれています。ポリフェノールは体内で抗酸化作用を有します。一方悪玉コレステロールの酸化は動脈硬化を進行させることがわかっています。ポリフェノールはこの過程をブロックすることによって動脈硬化を防ぎ、虚血性心疾患発症を予防しているのではないかと考えられています。
 ポリフェノールは植物の光合成で作られる色素や苦味の成分の総称です。ポリフェノールはほとんどの植物に含まれていますが、食物では赤ワイン、チョコレート、お茶、ブルーベリー、柿などに多く含まれています。
 赤ワイン以外にもアルコール自体に善玉コレステロールを増やす作用があります。そのため適度の飲酒は動脈硬化を予防し、狭心症などの動脈硬化性疾患にかかりにくくする事が示されています。

飲みすぎると
 アルコールにはこれらの薬理作用がある一方で、飲みすぎれば体に悪いことは明らかです。適量はアルコールの量として一日30g程度まで。ビール中びんなら1〜2本、日本酒で1〜2合、ウイスキーダブルでは1〜2杯までとなります。
 アルコールのエネルギー値は1gあたり5Calです。30g摂ると、150Calで、ごはん茶碗1杯分のカロリーがあります。このようにアルコールは高エネルギー成分であると同時に、食欲亢進作用があるため、食べ過ぎて肥満や生活習慣病の誘因となります。
 アルコールを摂りすぎると尿酸排泄能が低下するため、高尿酸血症、痛風の原因となります。特にビールにはプリン体が多く含まれるため、要注意です。
 またアルコールには利尿作用があるため脱水傾向となり、血液が濃縮します。血栓症が起こりやすくなり虚血性心疾患を増悪させます。特にアルコール度数の高い酒を飲むときには、水分もとるようにしましょう。

 そこでアルコール健康医学協会では正しいアルコールの飲み方をまとめています。

  1)楽しい雰囲気で飲む。
  2)酒の無理強いはしない。
  3)時間をかけて飲む。
  4)食べながら飲む。
  5)飲酒量はビール1〜2本、日本酒1〜2合、ウイスキーダブル1〜2杯までとする。
  6)夜12時以降はやめる。
  7)毎日続けて飲まない。
  8)薬剤と一緒に飲まない。
  9)強い酒は薄めて飲む。
  10)楽しみとして飲む。

 以上を忘れずに、楽しく、体にいい酒を飲みたいものです。