肥満度を示す指標として、ボディマスインデックス、BMI(Body Mass Index)が使用されます。BMIは体重(Kg)/身長2(m2)で算出します。肥満度が上昇すると病気にかかりやすくなり、死亡率が上昇します。健康で最も病気にかかりにくいBMI値は22で、理想体重とされます。 このときの体重(Kg)=身長2(m2)X22を標準体重として使用します。例えば身長160cmでは標準体重は56Kgです。BMIが24を超えると肥満と呼ばれます。
運動療法の減量効果
運動強度では中等度以下の運動で糖質、脂質両方が消費され、強度が高まるにつれ主に糖質が消費されるようになります。運動開始初期にはまずグリコーゲンが利用され、次に糖質が消費されます。運動が長時間になると、脂肪が消費されるようになります。従って、脂肪を減らす目的の運動療法では、中等度以下の強度の運動を長時間行うのが効果的です。
運動療法の全身への効果
1.インスリン感受性
運動によりインスリン感受性が改善し、糖尿病にかかりにくくなります。
2.循環器疾患
運動により脂肪が消費され、高脂血症が改善します。その結果高血圧が改善したり、虚血性 心疾患の頻度が低下します。
3.体力向上
運動により心肺機能が高められます。筋力が強化され、骨からのカルシウム喪失が予防でき ます。
4.その他
運動により爽快感がえられ、ストレス解消になります。神経系を賦活させるため、老化防止 に効果があります。また免疫能を高めカゼなどの感染症にかかりにくくなります。
減量のしかた
1.食事療法
肥満のある場合、当初は1日の摂取カロリーを1200Cal、もしくは標準体重X25Calとします。これで1日に500Calの負のエンルギーバランスとなり、週に0.5kgの減量、1-2ヶ月で3kgの減量を目指します。
しかし実際にはこの1日摂取カロリーを継続していくことは難しいことが多いため、下記の運動療法で1日300kcalを消費し、軽作業をしている場合で1日摂取カロリーを1500Cal前後とすることが多いです。
2.運動療法
40分間の歩行や自転車で消費される熱量は約160Calで、ごはん茶碗1杯分のカロリーに相当します。運動療法のみで十分な減量をするのは、長時間の運動が必要となるため、継続するのは困難です。食事療法や内服薬と併用して効果を高めましょう。
まず1日の食事や行動の記録をとり、摂取エネルギー量、消費エネルギー量を算出します。最初は1日消費エネルギー量の10%の運動量から始めましょう。例えば1日消費エネルギー量が1500Calなら150Cal、体重50Kgの人で歩行なら40分間、ジョギングなら20分間の運動量から開始します。
無理のない生理的範囲の減量は、月に1-2Kg程度脂肪組織が減る程度と考えられます。脂肪組織1Kgは7000Calのエネルギー量に相当します。1日に換算すると250-500Calの負のエンルギーバランスとなります。このうち半分のカロリーを食事療法で減量し、残り半分に相当する運動をすると良いでしょう。具体的には毎日、ごはん茶碗1杯分摂取カロリーを減らし、 40分間歩く、となります。
喘息を増悪させる吸入抗原には、ハウスダスト、ダニなどほこりの成分、シラカバ、ヨモギなどの花粉、ペットのふけ、カビ、職業に関係したものなどがあります。成人では約2/3の患者さんでアレルギー性素因が認められますが、小児ではほとんどの例でアレルギー性素因がみられます。
症状
ダニなどのアレルギーを持つ喘息患者さんがアレルゲンを吸入すると、吸入直後に気道が収縮し発作を起こします。さらに吸入数時間後から気道にアレルギー性炎症が起こり、遅発性の喘息症状の悪化をきたします。
喘息発作がどのような時に起こるのかが大切です。吸入した直後でなくてもその日の夜から発作が始まることがあります。また喘息症状以外にも鼻水や目のかゆみを伴っていることがあります。のどの違和感が強い場合にはかぜと思っている患者さんがいます。
室内で飼うペットアレルギーでは、飼育を始めると症状が出現し、ペットの手入れをすると症状が増悪します。花粉ではシラカバは春、カモガヤは夏、ヨモギは秋にアレルギー症状を増悪させます。一方ダニアレルギーでは1年中症状が続きますが、就寝時に増悪することがよくあります。
検査、診断
アレルギー体質の人では血液中の好酸球やIgE抗体の増加が認められます。また特定のアレルゲンに対して結合する特異的IgE抗体を持っています。血液検査で特異的IgE抗体の種類と量を調べます。アレルゲンに対して反応するかどうか皮膚テストをすることもあります。さらに吸入誘発試験をして喘息発作が誘発されれば、アレルゲンであると確定されます。この検査は入院して施行しますが重症発作の危険性もあり、実際には症状や特異的IgE抗体から原因アレルゲンを判断しています。
アレルゲンへの対策
ダニは喘息患者の吸入アレルゲンのうちでハウスダストとともに最もよくみられるものです。ダニは暖かく湿ったところでよく繁殖します。都市部で喘息の発症頻度が高いのは密閉した室内で、ダニが繁殖することが理由の1つと考えられます。窓を開けて部屋の風通しをよくしましょう。
ダニを吸入するのが一番多いのは夜寝具に入る時です。寝具は干して掃除機をかけておきます。まくらカバー、シーツも洗濯してダニを除きます。絨毯、カーペットはダニが増えやすいところなのでよく掃除機をかけ、できれば使わないようにします。その他布製のソファ、クッション、ぬいぐるみにも掃除機をかけたり、カバーを洗ったりしましょう。
花粉アレルギーの患者さんは花粉の季節に目や鼻の症状とともに、喘息症状が増悪します。花粉飛散開始前に抗アレルギー薬の内服治療を開始して症状の悪化を予防します。ネコ、イヌなどのペットを室内で飼うことは喘息発作の原因となります。
喘息患者さんはまず検査を受けて、どの抗原に対してアレルギーがあるのかを知りましょう。そしてできるだけアレルゲンを取り除いたり、避けるようにすることが喘息治療の第一歩です。
慢性閉塞性肺疾患(COPD、肺気腫、慢性気管支炎など)は世界の死亡原因の第4位であり、さらに患者数の増加が予想されます。高齢化社会を迎えるわが国にとっても大きな問題となると考えられます。COPDの治療として薬物療法、呼吸リハビリテーション、酸素療法、外科療法などが行われます。今回はこれらのうち在宅酸素療法(HOT, Home Oxygen Therapy)についてです。わが国ではHOTは約9万人で施行され、そのうちCOPDが40%を占めています。
在宅酸素療法とは
HOTは慢性の低酸素血症を伴う呼吸不全の患者さんに自宅で長期的に酸素吸入を行うもので、入院日数の減少、運動能力の改善が期待できます。酸素供給源として、酸素濃縮器が主に使用され、歩行時には酸素ボンベを使用します。これらからチューブ、鼻カニュラを通して酸素を吸入します。
低酸素血症が続くと、肺高血圧や心臓への負荷、脳の障害などが出現します。酸素療法はこれらの症状を改善することによって、生活の質を改善し、COPD患者の生命予後を延長します。
在宅酸素療法の適応
HOTの適応となる患者さんは病状が安定した状態で、血中酸素濃度が55Torr以下、もしくは60Torr以下で肺高血圧を合併しているか、睡眠時や労作時に低酸素血症をきたす人です。健康人では血中酸素濃度は80Torr以上あります。
在宅酸素療法の実際
HOTでは酸素吸入をできるだけ長時間、少なくとも1日15時間以上、理想的には24時間することが大切です。安静時に酸素吸入をして、血液中の酸素濃度が保たれるよう酸素流量を決定します。
睡眠中は呼吸の乱れが起こりやすいため、低酸素血症となることがあります。夜間睡眠中の血中酸素飽和度をモニターして90%以上になるように酸素流量を決定します。
歩行、食事や入浴など日常生活で不可避な労作時に低酸素血症の悪化がみられます。6分間歩いた時にどの程度の低酸素血症が起こるかを血中酸素飽和度モニターから判断して、酸素流量を決定します。通常は安静時の2倍程度となります。
HOT治療中には酸素濃縮器からのチューブが届く範囲内での生活になりがちですが、運動能力の低下を防ぐためにも外出や旅行も勧められます。近所の外出には酸素ボンベを使用し、遠方の旅行では飛行機内での酸素吸入、ホテルなどでの酸素濃縮器の使用が可能です。
HOTでもう1つ大切なことは禁煙です。これによって、COPDの進行を抑え、火傷や火災の発生を予防します。HOTが必要な患者さんはほとんどが重症で、かぜなどをきっかけに呼吸状態が急に悪化することがよくあります。呼吸困難が強くなった時には自分で酸素流量を増やさないで、すぐに受診しましょう。
重症のCOPD患者さんでは禁煙、包括的呼吸リハビリテーションなどの治療とともに、HOTを施行することで生活の質や、生命予後を改善することが可能です。
糖尿病患者の数は増え続けており、潜在患者も含めると約700万人いると推定されています。糖尿病の治療にかかる費用は年間約1兆円です。糖尿病が原因の血液透析などの合併症も加えると約1.5兆円で、医療費全体の6.5%に相当します。
糖尿病の症状
糖尿病発症初期には自覚症状はありません。高血糖が進行するにつれて、のどが渇く、尿量が多いなどの症状が出現します。病初期には健康診断で発見され、治療が開始されます。
糖尿病の合併症
高血糖の状態を放置すると全身に様々な合併症を引き起こします。そして糖尿病患者の寿命は健康人よりも10年短いといわれています。
1)網膜症。視力が低下します。失明に至ることもあります。
2)腎症。腎機能が低下します。血液透析が必要になることがあります。
3)神経障害、手足のしびれなどの症状が出現します。
以上が3大合併症とよばれます。これらは糖尿病発病5〜10年後に現れると考えられています。また糖尿病による動脈硬化が原因で脳梗塞、脳出血、狭心症、心筋梗塞が起こります。これらは3大合併症よりも早期に、糖尿病発病初期からすでに発症のリスクが高まっています。
増悪因子
食べ過ぎ、アルコール、ペットボトル飲料の飲み過ぎ、運動不足は体重増加を招き、糖尿病を悪化させます。かぜなど感染症の合併やステロイドなどの薬剤でも糖尿病が増悪します。
軽症糖尿病の治療
健康人では食後にインスリン分泌が増えて、血糖値の上昇をコントロールしますが、軽症糖尿病では食後のインスリン分泌反応が低下するため、食後の血糖値が高くなります。治療はまず食事療法、運動療法を行い、インスリン作用の不足による代謝異常をコントロールします。
これで効果が不十分な場合には小腸での糖質の吸収を遅延させ、食後高血糖を軽減させるα-グルコシダーゼ阻害薬、インスリンの効果を強くするビグアナイド薬やピオグリダゾンなどが使用されます。
薬は主治医の指示に従って正しくのみましょう。のみ忘れたり、自分の判断で量を増減してはいけません。アルコールはできるだけ控えましょう。また発熱時や胃腸の調子が悪い時など病気の日には、薬をのむかどうか主治医に相談してください。また他の病気のため薬をのむ場合には血糖降下剤の効果が強くなりすぎ低血糖になったり、逆に効果が弱くなったりします。別の病院を受診する時にはお薬手帳を示して、糖尿病の治療を受けていることを伝えましょう。これらの治療を行い、動脈硬化性疾患や3大合併症の発症を予防します。
糖尿病は本人が気づかないうちに発症し増悪します。早期に発見し、軽症のうちに治療を開始することが合併症発症を予防し、健康人と同様の生活を送れるようになるための第一歩です。
普段から便秘で悩まれている方も多いと思います。今回は便秘のコントロールについてです。
便秘とは
食べた物は食道を通って胃の中へ入ります。食物が入り胃がふくらむと、反射的に大腸が動き始めます。大腸の中の便が直腸に流れ、直腸壁が刺激されます。これが大脳に伝わり便意が起きます。いきんで腹圧が高まり便が排出されます。この過程のどこかに障害があると便秘が起こります。
便秘は排便量が減少したり、便が固くなったりして、排便困難や残便感などの不快感を感じる状態です。排便習慣は人によって様々で、便通が3〜4日に1回でも排便に困難を感じなければ便秘とはいいません。
便秘のタイプ
1)大腸ガンや大腸ポリープなど腹部の病気によるもの。
2)糖尿病、甲状腺機能低下症などの全身性疾患によるもの。便秘が長く続く場合は、健康診断や検査をおすすめします。
3)モルヒネなど薬剤性の便秘。
4)単純性便秘
老人や無力体質者に多く、腹痛はなく便意が弱いのが特徴です。運動不足の人に多くみられますが、最近若い女性にも増えています。大腸の運動が低下して起こる弛緩性便秘と、老化や便意を我慢することによって直腸からの反射が減弱し、便意が起こらなくなる直腸性便秘があります。
5)けいれん性便秘
副交感神経の過緊張による蠕動運動亢進です。よくみられるのが過敏性大腸症候群の 便秘型です。腹痛があり便意は強いですが、便はうさぎの便様で残便感があります。ストレスや過労が原因になります。
このうち単純性便秘、けいれん性便秘は腸管の運動機能障害によるもので、旅行などの環境変化でも起こります。朝、排便に十分な時間をとれないためなど、よくみられる便秘です。
便秘の改善法
腹部の病気や全身性疾患に伴う便秘では、病気の治療が第一です。
一方単純性便秘では食生活や排便習慣に問題があることが多いようです。規則的な生活を目指し、1日3回食事をとりましょう。野菜、穀物、海藻、きのこ、果物など繊維成分の多い食品を食べましょう。適量の油は潤滑油になります。酸味や香辛料は腸に刺激を与えてくれます。適度のアルコールも便通をよくしてくれます。。ヨーグルトは腸内環境を整えます。朝起きがけにコップ1杯の冷水を飲むなど水分を十分に摂取することも大切です。定期的に運動をしましょう。ストレッチやウォーキングは腸に刺激を与え排便を促します。また毎日朝食後など一定の時間に排便をする習慣が大切です。
けいれん性便秘ではコーヒーなどの嗜好品をとりすぎないように注意しましょう。また原因となるストレスへの対策も必要です。入浴のしかた、ハーブなど気分をリラックスさせる方法をさがしましょう。
治療薬としては、整腸剤、漢方薬、下剤などが使用されます。直腸性便秘には下剤のほかに、浣腸薬や坐剤が使用されます。けいれん性便秘には消化管の運動機能を整える薬や抗不安薬を使用します。妊娠中の下剤の使用は注意が必要です。医師の指導を受けて服用して下さい。
排便は健康に生きるため大切なことです。恥ずかしがらずに相談したり、重症の場合は治療を受けましょう。また生活習慣や食事など自分で改善できる点もありますので、試してみてください。