以下の質問は気管支喘息の治療について、患者さんからよくきかれるものです。
A. 夜や早朝に起きる咳込み、ゼーゼー、息苦しさは喘息によくみられる症状です。クリニックでもらった吸入薬(β2刺激薬)ですぐに症状がよくなるなら、診断は喘息ないしその類縁疾患です。頻度的には喘息であることがほとんどです。正確な診断を受けて治療を開始しましょう。
喘息と診断され、治療を継続しています。いつ喘息は治りますか?
A.
喘息の病態は慢性の気道炎症です。喘息は高血圧や糖尿病のような慢性の病気です。かぜの咳のような感染症は一週間も治療すれば完治しますが、喘息ではそうはいきません。成人してから発症した喘息患者さんでは治癒といわれる、長期間発作のない状態になるのは軽症患者のうちのごく一部の患者さんだけです。多くの喘息患者さんでは一時的に症状が改善しても、かぜや疲れ、アレルギー性鼻炎などをきっかけにして、症状が再悪化する場合がほとんどです。重症度が軽症持続型以上の患者さんでは長期管理薬による治療を継続した方が、将来的に良い結果をもたらします。
喘息のため吸入薬、内服薬の治療をしています。いつまで続ければいいですか?
A.
喘息患者さんの多くは室内のダニ、ほこりなど喘息を悪化させる原因を減らすことによって症状は軽減します。それに加えて正しい薬物治療を続けることによって、健康人と同等な家庭生活、社会生活を送ることができます。
しかし喘息患者さんでは気道炎症が慢性的に続くことによって、気道壁のリモデリング(気管支壁が厚くなる)が起こり、また急性の気管支収縮が起こりやすくなります。その結果喘息が重症化、難治化し、呼吸機能が低下してきます。もとにある気道炎症を抑える治療を継続して重症化を防ぐ事が、喘息の治療で一番大切な事です。
A. 喘息を発症して何年もたった患者さんでは、気管支が収縮してもあまり息苦しさを感じない場合があります。自覚症状がなくても、肺機能が低下している場合は治療を続けます。ピークフローモニタリングによって、自宅で毎日肺機能を調べる場合がありますが、この値が低い場合や一日の変動率が大きい場合も治療を継続します。自覚症状だけで判断せずに、喘息の病態によって治療方針を決定することが大切です。
A. 喘息の重症度は以前は発作の強さや回数など自覚症状で判定していました。しかし患者さんによって苦しい感じを強く感じる人もいれば、あまり感じない人もいます。あまり苦しいと感じない人の方が、重症の喘息発作を起こして入院する回数が多いといわれています。このような事を防ぐために、自宅で毎日ピークフローモニタリングを行い、ピークフロー値の変化で病状を判断し、治療方針を決めていくようになりました。患者さんに合ったグリーンゾーン、イエローゾーン、レッドゾーンを決めています。クリニックでご相談ください。
A. 喘息発作の誘因には様々なものがありますが、吸入アレルゲンで最も重要なのはハウスダスト、ダニです。またカンジダ、クラドスポリウムなどのカビも喘息症状を増悪させます。カビは洗面所、浴室また結露した壁などで増殖します。換気をよくしてカビがはえないようにしましょう。室内でペットを飼う家庭がふえています。イヌ、ネコなど毛のはえたペットでは、毛やフケ、付着したダニ、カビが発作の原因となります。その他、花粉アレルゲンや自動車の排気ガス、感冒、仕事による過労、ストレス、睡眠不足などが発作の原因となります。
A. 成人喘息では6-7割の患者でダニに対するアレルギーがみられます。ダニは室内の埃の中にあるアレルゲンで、ダニに対してアレルギーがある喘息患者が吸入すると、症状の悪化を起こします。ダニを最も吸入しやすいのは夜寝具に入る時です。そのため寝具は良く干して、掃除機をかけて埃やダニをできるだけ少なくすることが大切です。カーペットもダニが増えやすいので、できればフローリングにした方が良いでしょう。
A. 成人喘息患者のうち2/3はなんらかのアレルギー性素因を持っています。小児ではアレルギー性素因を持つ患者がほとんどで、逆に高齢者では少ない傾向です。喘息の気道炎症の病態はアレルギー性でもそうでなくても同じです。シラカバ、カモガヤ、ヨモギなど花粉アレルギーをもつ患者さんは、花粉の飛散時期に鼻炎症状とともに喘息症状が増悪しますので、通常の治療に加えて花粉飛散前から抗アレルギー薬の内服を開始し発作を予防します。
A. 喘息の治療をしながら、タバコを吸っている人がいます。タバコは喘息発作を引き起こすのみならず、肺気腫や肺癌など他の病気の原因となります。高齢になってから喘息に肺気腫を併発すると呼吸困難が増悪し、在宅酸素療法が必要になることがあります。こういう患者さんでも喘息発作中は苦しくなるため、タバコを吸えないことが多いようです。発作が起こったのを機会に、ニコチンパッチなどの禁煙方法がありますので、禁煙指導も受けると良いでしょう。
A. ステロイド薬は長期間にわたり、のみ続けると全身的な副作用が出現します。糖尿病、胃潰瘍、骨そしょう症、高血圧、肥満、小児では成長遅延などです。そのため気管支喘息の治療ではステロイド薬の内服治療は発作時の短期間のみ行い、症状改善後吸入ステロイドに変更することが普通です。吸入ステロイドは通常の使用量では、全身性の副作用の心配は殆どありません。ステロイドの吸入量が多くなると、のどの違和感、声のかすれ、咽頭カンジダ症が起こることがありますが、いずれも吸入を中止または減量によって自然に改善します。また吸入後は必ずうがいをして、のどの局所症状や嚥下して全身的な副作用を起こすのを予防します。
A. この吸入薬はβ2刺激薬です。気管支を拡張させ、症状を改善させる即効性の薬です。この薬は単独で使用するのではなく、吸入ステロイドなどの長期管理薬をきちんと続け、それでも症状が増悪する時に併用する薬です。以前はこの薬だけを使いすぎたためと考えられる喘息死がありましたが、現在では正しい使い方が普及してきたためそのようなことは殆ど無くなりました。一日に3−4回吸入する程度では危険性はありません。
A. 妊娠中に重症発作が続くようでは、低酸素血症のため胎児の成長障害や流産も起こりえます。治療は基本的には妊娠前の治療を継続します。吸入ステロイド、内服薬の治療を継続し、ダニなどのアレルゲン吸入を避けてください。また喘息治療薬の胎児に対する影響を心配して、勝手にやめることのないようにしてください。薬の副作用よりも重症発作のほうが胎児に悪影響を及ぼします。病状からみて減らせる薬は中止ないし減量 します。ステロイドやβ2刺激薬の吸入は正しく使用していれば、継続して問題ありません。内服薬ではステロイド薬の短期内服、テオフィリン薬も問題ありません。抗アレルギー薬、 メディエーター拮抗薬は、吸入薬のインタール以外は安全性が確立していませんので、内服を中止すべきです。主治医に妊娠したことを必ず告げて、治療方針の相談をしてください。
A. 小児の喘息では半数は思春期までに治るといわれています。この場合のように治療を続けて、発作の無い状態を維持することが喘息を治すために大切です。喘息の病態は大人も子供も大きな差はありません。しかし子供は成長に伴って、気管支が大きく成長し、肺機能も値が大きくなっていきます。この期間にきちんと治療を続けることで、治癒する確率が高くなります。治療終了時期については主治医に相談してください。
- 私は喘息ですか?
- 喘息は治りますか?
- 喘息の治療はいつまで続ければいいですか?
- 発作が無いのに治療をする?
- ピークフローモニタリングをした方がいい?
- 喘息患者の日常生活の注意点
- ダニは喘息発作を起こす重要な因子
- アレルギー性の喘息
- タバコは喘息発作以外にも他の病気の原因になります
- 吸入ステロイドの使い方と副作用
- 気管支拡張剤の吸入は使っても大丈夫?
- 妊娠中の喘息治療は?
- 小児の喘息は大人と違いますか?
私は喘息ですか?
Q. ときどき咳や、ゼーゼーと息苦しい感じが起きます。とくに夜や早朝に起きやすいです。クリニックでもらった吸入薬を使うとすぐに症状は良くなります。A. 夜や早朝に起きる咳込み、ゼーゼー、息苦しさは喘息によくみられる症状です。クリニックでもらった吸入薬(β2刺激薬)ですぐに症状がよくなるなら、診断は喘息ないしその類縁疾患です。頻度的には喘息であることがほとんどです。正確な診断を受けて治療を開始しましょう。
喘息は治りますか?
Q.喘息と診断され、治療を継続しています。いつ喘息は治りますか?
A.
喘息の病態は慢性の気道炎症です。喘息は高血圧や糖尿病のような慢性の病気です。かぜの咳のような感染症は一週間も治療すれば完治しますが、喘息ではそうはいきません。成人してから発症した喘息患者さんでは治癒といわれる、長期間発作のない状態になるのは軽症患者のうちのごく一部の患者さんだけです。多くの喘息患者さんでは一時的に症状が改善しても、かぜや疲れ、アレルギー性鼻炎などをきっかけにして、症状が再悪化する場合がほとんどです。重症度が軽症持続型以上の患者さんでは長期管理薬による治療を継続した方が、将来的に良い結果をもたらします。
喘息の治療はいつまで続ければいいですか?
Q.喘息のため吸入薬、内服薬の治療をしています。いつまで続ければいいですか?
A.
喘息患者さんの多くは室内のダニ、ほこりなど喘息を悪化させる原因を減らすことによって症状は軽減します。それに加えて正しい薬物治療を続けることによって、健康人と同等な家庭生活、社会生活を送ることができます。
しかし喘息患者さんでは気道炎症が慢性的に続くことによって、気道壁のリモデリング(気管支壁が厚くなる)が起こり、また急性の気管支収縮が起こりやすくなります。その結果喘息が重症化、難治化し、呼吸機能が低下してきます。もとにある気道炎症を抑える治療を継続して重症化を防ぐ事が、喘息の治療で一番大切な事です。
発作が無いのに治療をする?
Q. 喘息の治療を開始して発作がなくなったのに、吸入を続けるようにいわれました。発作が無いのに治療をする必要がありますか?A. 喘息を発症して何年もたった患者さんでは、気管支が収縮してもあまり息苦しさを感じない場合があります。自覚症状がなくても、肺機能が低下している場合は治療を続けます。ピークフローモニタリングによって、自宅で毎日肺機能を調べる場合がありますが、この値が低い場合や一日の変動率が大きい場合も治療を継続します。自覚症状だけで判断せずに、喘息の病態によって治療方針を決定することが大切です。
ピークフローモニタリングをした方がいい?
Q. 受診時にピークフローを毎日測定して記録するようにいわれました。いままでも喘息日誌に症状の記録はしていましたが、これだけじゃだめでしょうか?A. 喘息の重症度は以前は発作の強さや回数など自覚症状で判定していました。しかし患者さんによって苦しい感じを強く感じる人もいれば、あまり感じない人もいます。あまり苦しいと感じない人の方が、重症の喘息発作を起こして入院する回数が多いといわれています。このような事を防ぐために、自宅で毎日ピークフローモニタリングを行い、ピークフロー値の変化で病状を判断し、治療方針を決めていくようになりました。患者さんに合ったグリーンゾーン、イエローゾーン、レッドゾーンを決めています。クリニックでご相談ください。
喘息患者の日常生活の注意点
Q. 喘息の診断を受けて治療を継続していますが、時々発作が出現します。毎日の生活でどのような点について注意したらいいでしょうか。A. 喘息発作の誘因には様々なものがありますが、吸入アレルゲンで最も重要なのはハウスダスト、ダニです。またカンジダ、クラドスポリウムなどのカビも喘息症状を増悪させます。カビは洗面所、浴室また結露した壁などで増殖します。換気をよくしてカビがはえないようにしましょう。室内でペットを飼う家庭がふえています。イヌ、ネコなど毛のはえたペットでは、毛やフケ、付着したダニ、カビが発作の原因となります。その他、花粉アレルゲンや自動車の排気ガス、感冒、仕事による過労、ストレス、睡眠不足などが発作の原因となります。
ダニは喘息発作を起こす重要な因子
Q. ダニに対してアレルギーがあると言われましたが、どうすればいいですか?A. 成人喘息では6-7割の患者でダニに対するアレルギーがみられます。ダニは室内の埃の中にあるアレルゲンで、ダニに対してアレルギーがある喘息患者が吸入すると、症状の悪化を起こします。ダニを最も吸入しやすいのは夜寝具に入る時です。そのため寝具は良く干して、掃除機をかけて埃やダニをできるだけ少なくすることが大切です。カーペットもダニが増えやすいので、できればフローリングにした方が良いでしょう。
アレルギー性の喘息
Q. 検査の結果アレルギー性の喘息といわれました。治療法が違うのでしょうか?A. 成人喘息患者のうち2/3はなんらかのアレルギー性素因を持っています。小児ではアレルギー性素因を持つ患者がほとんどで、逆に高齢者では少ない傾向です。喘息の気道炎症の病態はアレルギー性でもそうでなくても同じです。シラカバ、カモガヤ、ヨモギなど花粉アレルギーをもつ患者さんは、花粉の飛散時期に鼻炎症状とともに喘息症状が増悪しますので、通常の治療に加えて花粉飛散前から抗アレルギー薬の内服を開始し発作を予防します。
タバコは喘息発作以外にも他の病気の原因になります
Q. 発作の原因になるからタバコをやめるようにいわれましたが、なかなかやめられません。A. 喘息の治療をしながら、タバコを吸っている人がいます。タバコは喘息発作を引き起こすのみならず、肺気腫や肺癌など他の病気の原因となります。高齢になってから喘息に肺気腫を併発すると呼吸困難が増悪し、在宅酸素療法が必要になることがあります。こういう患者さんでも喘息発作中は苦しくなるため、タバコを吸えないことが多いようです。発作が起こったのを機会に、ニコチンパッチなどの禁煙方法がありますので、禁煙指導も受けると良いでしょう。
吸入ステロイドの使い方と副作用
Q. 吸入ステロイドを毎日使うようにいわれましたが、ステロイドの副作用が心配です。A. ステロイド薬は長期間にわたり、のみ続けると全身的な副作用が出現します。糖尿病、胃潰瘍、骨そしょう症、高血圧、肥満、小児では成長遅延などです。そのため気管支喘息の治療ではステロイド薬の内服治療は発作時の短期間のみ行い、症状改善後吸入ステロイドに変更することが普通です。吸入ステロイドは通常の使用量では、全身性の副作用の心配は殆どありません。ステロイドの吸入量が多くなると、のどの違和感、声のかすれ、咽頭カンジダ症が起こることがありますが、いずれも吸入を中止または減量によって自然に改善します。また吸入後は必ずうがいをして、のどの局所症状や嚥下して全身的な副作用を起こすのを予防します。
気管支拡張剤の吸入は使っても大丈夫?
Q. 喘息の治療中ですがまだ時々発作があります。先日クリニックで気管支拡張剤の吸入をするように言われましたが、友人からこの吸入を使うと死ぬことがあると聞きました。A. この吸入薬はβ2刺激薬です。気管支を拡張させ、症状を改善させる即効性の薬です。この薬は単独で使用するのではなく、吸入ステロイドなどの長期管理薬をきちんと続け、それでも症状が増悪する時に併用する薬です。以前はこの薬だけを使いすぎたためと考えられる喘息死がありましたが、現在では正しい使い方が普及してきたためそのようなことは殆ど無くなりました。一日に3−4回吸入する程度では危険性はありません。
妊娠中の喘息治療は?
Q. 喘息の治療中ですが、妊娠しました。今までどうりの治療でいいでしょうか。A. 妊娠中に重症発作が続くようでは、低酸素血症のため胎児の成長障害や流産も起こりえます。治療は基本的には妊娠前の治療を継続します。吸入ステロイド、内服薬の治療を継続し、ダニなどのアレルゲン吸入を避けてください。また喘息治療薬の胎児に対する影響を心配して、勝手にやめることのないようにしてください。薬の副作用よりも重症発作のほうが胎児に悪影響を及ぼします。病状からみて減らせる薬は中止ないし減量 します。ステロイドやβ2刺激薬の吸入は正しく使用していれば、継続して問題ありません。内服薬ではステロイド薬の短期内服、テオフィリン薬も問題ありません。抗アレルギー薬、 メディエーター拮抗薬は、吸入薬のインタール以外は安全性が確立していませんので、内服を中止すべきです。主治医に妊娠したことを必ず告げて、治療方針の相談をしてください。
小児の喘息は大人と違いますか?
Q. 3歳の子供ですが、喘息の治療を続けて元気にしています。子供の喘息は大きくなると治ると聞いたことがありますが?A. 小児の喘息では半数は思春期までに治るといわれています。この場合のように治療を続けて、発作の無い状態を維持することが喘息を治すために大切です。喘息の病態は大人も子供も大きな差はありません。しかし子供は成長に伴って、気管支が大きく成長し、肺機能も値が大きくなっていきます。この期間にきちんと治療を続けることで、治癒する確率が高くなります。治療終了時期については主治医に相談してください。